麻の夏着物「小千谷縮」とは?生地の特徴や着て行ける場所などを解説

小千谷縮 夏着物 SUMMER WEAE

こんにちは、カジュアル着物愛好家のさないです。

今回は小千谷縮(おぢやちぢみ)にフォーカス!
小千谷縮は、夏の和装を快適に彩る麻織物。独特のシボが肌に心地よく、通気性・吸湿性に優れた夏にぴったりの素材です。

小千谷縮の歴史や特徴、選び方などを解説するので、まだ小千谷縮を手に取ったことがない方も、この機会にぜひチェックしてみてください!

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小千谷縮とは?|新潟発の伝統的な夏着物

小千谷縮は、新潟県小千谷市周辺で生産されている伝統的な麻織物。夏の着物として古くから親しまれてきた、日本の気候に最適な素材です。

小千谷縮の歴史

小千谷縮の歴史は古く、そのルーツは奈良時代にまで遡ると言われています。当時から越後地方では、良質な麻織物が生産されていましたが、目覚ましい発展を遂げたのは江戸時代に入ってから。

播州(現在の兵庫県)から移住した堀次郎将俊(ほりじろうまさとし)が、現在の小千谷縮の基礎となる技術を確立したと伝えられています。彼は、麻糸を撚ってから織り、湯もみで縮ませるという画期的な手法を考案。これが小千谷縮特有のシボを生み出す源流となりました。

江戸時代には、その涼しさと独特の風合いから、庶民だけでなく武士や富裕層にも愛されるようになります。明治時代以降も、機械化の波がありながらも、職人たちの手によって伝統的な製法が守られ、今日まで受け継がれてきました。

そして1955年(昭和30年)には国の重要無形文化財に指定。さらに2007年(平成19)年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されるなど、その価値は国内外で高く評価されています。

越後上布との違いと関係性

小千谷縮を語る上で、しばしば比較されるのが越後上布です。どちらも新潟県で生産される麻織物であり、夏の着物として用いられますが、両者には明確な違いと深い関係性があります。

両者のもっとも大きな違いは、その原料と製法です。越後上布は、苧麻(ちょま)の繊維を一本一本手で績(う)んで糸にする手績みの技術を採用。非常に手間と時間がかかるため生産量が少なく、希少価値の高い最高級の麻織物として知られています。

一方、小千谷縮も苧麻を原料としますが、手績みではなく、より効率的な製法で糸が作られます。そして、小千谷縮の最大のポイントといえるのが、緯糸に強い撚りをかけて織り上げ、湯通しすることによって独特のシボを生み出す点です。このシボのおかげで肌への接触面積が減り、通気性を高める効果をもたらします。

歴史的な関係性としては、越後上布が先に発展し、その技術が小千谷に伝えられたという背景があります。小千谷縮は、越後上布の技術を基盤としつつも、独自の改良を加え、より生産性高く、かつ涼しさを追求。同じ地で生まれた両者は、互いに影響を与え合いながら、日本の麻織物文化を長きにわたって牽引してきたのです。

小千谷縮の魅力|麻が生む涼しさと着心地

ここからは、小千谷縮の夏着物としての魅力をご紹介します。

シボがつくる独特の風合い

小千谷縮

小千谷縮の最大の特徴といえるのが、生地全体に施された“シボ”です。シボとは、緯糸に強い撚りをかけて織り上げた後、湯通しすることで糸が縮み、生地表面に現れる独特の凹凸のこと。

このシボがあることで、肌に生地が直接触れる面積が大幅に減り、汗をかいたときのベタつき感を軽減。シボの入り方や大きさは、織元や糸の撚り具合によって微妙に異なり、それがまた小千谷縮の奥深さでもあります。

生地は程よく透け感もあり、見た目も涼やか。シャリ感のある生地なのですべりにくく、慣れてない方でも着付けしやすい点もメリットです。

通気性・吸湿性に優れた夏向き素材

小千谷縮の原料である麻(苧麻)は、元々通気性と吸湿性に非常に優れた天然繊維。麻の繊維は中心部分が空洞になっていて空気を通しやすい構造になっているのです。さらに、小千谷縮特有のシボによる凹凸が、生地と肌の間に空間を作り出すことで、通気性は格段に向上。風が通り抜けることで熱がこもりにくく、涼しさを保ってくれます。

また、麻は綿の約2倍とも言われるほどの高い吸湿性を持っている点も特徴。汗をかいても素早く吸収し、そして素早く発散させる速乾性も兼ね備えているため、生地が湿って肌に張り付く不快感がありません。まさに、ジメジメとした日本の夏にぴったりの素材といえます。

どんな場面で着る?小千谷縮の着こなし方

小千谷縮は、普段着向けの夏着物です。具体的に季節としては何月頃から着れるのか、どこへ着て行けるのでしょうか?帯や小物の選び方もあわせてチェックしていきましょう!

小千谷縮はいつからいつまで着れる?

着物カレンダー

小千谷縮のオンシーズンは地域差などもありますが、だいたい6月~9月頃。色柄にもよりますが、単衣の時期にも着れるので、単衣か夏着物かで迷う時期にも活躍してくれます。

特に最近は春や秋でも30℃近くなる日が増えており、5月や10月に小千谷縮を着るという方も少なくありません。

日常着・普段着としてのカジュアルコーデ

小千谷縮は、紬(つむぎ)や木綿の着物と同様に、普段着として気軽に着られる着物です。友人とのランチ、美術館巡り、お祭り、花火大会、夏のちょっとしたお出かけなど、リラックスした場面での着用に最適です。

帯や小物の合わせ方と色選びのコツ

小千谷縮はカジュアル向けの着物なので、帯も同じカジュアル向けの名古屋帯や半幅帯などをあわせるのが基本です。正絹の帯だとすっきりとした上品な印象に、木綿や麻などの自然布を選ぶとほっこりとした素朴な装いを演出できます。

そして、帯や小物を選ぶときに悩みがちなのが色。考え方には色々ありますが、その中からもっともシンプルなコツとして挙げられるのが以下の3つです。

  • 反対色をあわせる
  • トーンをあわせる
  • モノトーン×アクセントカラーでまとめる

小千谷縮の地色と反対色(紺の場合は黄色やオレンジ系)の帯や小物をあわせると、コーデにメリハリが出て、個性的な雰囲気になります。逆にシンプルにまとめたいときは、トーンをあわせるのがおすすめ。鮮やかな色、くすみ色など、トーンをあわせることで、多色使いでも統一感のある印象になります。

白や黒、グレーといったモノトーンの小千谷縮の場合、ワンポイントだけ差し色を入れるのも◎。洋服感覚でコーディネートできるので、着物に慣れていない方でも着こなしやすいでしょう。

また、暑い時期なので選ぶカラーを寒色系や淡い色にすると涼しげな印象に。逆にイベントなど気分を盛り上げたいようなアクティブなシーンであれば、ビビッドなビタミンカラーなどを取り入れるのもおすすめです。

購入前に知っておきたい!選び方と価格帯

小千谷縮の購入を検討する際、いくつかのポイントを押さえておくことで、後悔のない買い物につながりやすくなります。着物初心者の方でも安心して選べるよう、具体的な情報をまとめました。

反物で買う?仕立て上がりで買う?

小千谷縮の購入方法は、大きく分けて反物(たんもの)で買うか、仕立て上がり(したてあがり)で買うかの2択。小千谷縮は反物での購入が定番ですが、一部仕立て上がりを購入できる店舗もあります。それぞれにメリット・デメリットがありますので、ご自身の状況に合わせて選びましょう。

金額はものによりますが、だいたい安いもので5万円前後から購入できます。

メリットデメリット
反物・自分ぴったりのサイズに仕立てられる
・柄や色の選択肢が豊富
・別途仕立て代がかかる
・仕立て上がりまでに時間がかかる
・採寸や仕立ての知識が必要
仕立て上がり・価格が明瞭
・購入してすぐ着用できる
・サイズがあわないことがある
・色柄の選択肢が少ない
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小千谷縮はどこで買える?

小千谷縮を購入できる場所は主に以下の4つです。

  • 呉服店、百貨店
  • ネット通販(メルカリなどフリマアプリも含む)
  • 産地直販・イベント
  • リサイクル着物店

もっとも王道なのが、呉服店や百貨店。専門知識を持ったスタッフが常駐しており、着物の選び方から仕立て、お手入れ方法まで、総合的なアドバイスを受けられます。反物の種類も豊富で、実際に生地を見て触って選ぶことも可能。採寸も正確に行ってくれるため、反物から仕立てたいときに特におすすめです。他の購入場所より価格は高くなる傾向がありますが、アフターフォローもしっかりしているので、初めての方でも安心して利用できます。

ネット通販は、自宅で手軽に、多様な小千谷縮を探せるところがメリット。実店舗よりも価格が抑えられていることも多く、掘り出し物が見つかる可能性もあります。ただし、直接生地の質感や色味を確認できないため、実際のイメージと異なっていたり、サイズがあわなかったりするケースも。初心者の方はオンラインではなく、なるべく対面で購入したほうがよいかもしれません。

新潟県小千谷市など産地での直販イベントや、百貨店などで開催される「伝統工芸展」などの催事でも、直接生産者から購入できる機会があります。開催時期が限られるためタイミングが重要ですが、通常よりもお得な価格で購入できたり、限定品に出会えたりすることも期待できるでしょう。

そして、リサイクル着物店で小千谷縮を買えることも。中古なので新品より手ごろな価格で購入できる上、現代ではあまり見られない希少性の高い色柄のものが見つかるかもしれません。ただし、リサイクルは一度は人の手に渡ったもの。多少は汚れや変色、破損などの難があると思っておいた方がよいでしょう。また、仕立て済みのものの場合、サイズがあわない可能性がある点には注意が必要です。

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お手入れ・保管のポイント|長く美しく着るために

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小千谷縮は丈夫な麻素材ですが、キレイな状態で長く着用するためには、適切なお手入れと保管が重要なポイントです。麻素材の特性を理解し、正しい方法でケアを行うようにしましょう。

麻素材の洗濯方法と注意点

小千谷縮は基本的に自宅で洗えるものがほとんどですが、洗濯の可否は購入時に確認しておくと安心です。もし洗濯できるかどうかわからない、自分で洗うのが不安という方は、着物専門のクリーニング店に相談するようにしましょう。

洗う場合は手洗いが定番。たらいや浴槽に水を張り、おしゃれ着用の中性洗剤を少量溶かして、やさしく押し洗いします。強く揉んだり擦ったりすると、シボが伸びたり生地が傷んだりする可能性があるので要注意。洗剤が残らないよう、水を入れ替えて十分にすすいだら、軽く絞って風通しの良い日陰で陰干しします。型崩れを防ぐためにも、着物ハンガーで干すのがおすすめです。

ちなみに、自己責任にはなりますが、個人的には手洗いが面倒なので、たたんでネットに入れて洗濯機のオシャレ着モードで洗ってます。そして、シーズンが終わるときは着物クリーニングに出し、シミ抜きと丸洗いをしてもらってます。

アイロンがけ・シワ対策のコツ

小千谷縮はシボがあるため、比較的シワが目立ちにくい素材ですが、完全にシワにならないわけではありません。

シワが気になるときはスチームアイロンを使うのがおすすめ。 シボが特徴の小千谷縮は、アイロンを強くかけるとシボが伸びてしまい、風合いが損なわれる可能性があります。そのため、シワが気になる部分にスチームを当て、熱と湿気でシワを伸ばしてみてください。

まとめ|小千谷縮で夏の着物を楽しもう

夏の和装を快適に彩る小千谷縮について、その歴史から魅力、着こなし方、そして長く愛用するためのポイントまで詳しくご紹介しました。

新潟の伝統技術が息づく小千谷縮は、麻特有のシボが生み出す涼やかな肌触りと、優れた通気性・吸湿性を兼ね備え、日本の蒸し暑い夏にこそ真価を発揮する、まさに理想的な夏着物。

カジュアルな夏の装いとして楽しめるので、今年の夏はぜひ小千谷縮をワードローブに加えてみてはいかがでしょうか?

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